ご報告


ご報告(2006年4月28日)

 代表の高槻成紀です。昨年に続いて今年も津波孤児を訪問し、皆様からのご善意を届けて参りました。これまでの基金は滞りなく孤児たちに届けられており、子供たちも順調に勉学を続けています。以下に今回の訪問をご報告しておきます。

  • 津波によって数枚の壁が突き破られた家。その破壊のすさまじさを伝えている。
  • 損壊し、そのまま残されている家も少なくない。
  • テントに替わって建てられた仮設住宅。左の黒いのはスイスから寄贈された貯水タンク。
  • ハンバントータの港。砂浜でバレーボールをする人を眺める人がおり、活気に満ちていた。
  • ハンバントータの街角。果物を売る店。人々は陽気で人なつっこい。
  • タンゴラ近くの海岸。何事もなかったかのような熱帯の海が印象的だった。
  • ある孤児の家。土造り、ヤシ葺きの簡素な家だが、庭は広かった。人物は孤児の世話を引き受けて下さっているドシマンタさん。
  • ラヒル君と彼の描いてくれた絵。
  • ラシカちゃんにプレゼントを渡す私。人々の暖かい表情が印象的だった。
  • マドシャニ君にプレゼントを渡す私。もらうのが待ちきれない様子だ。
  • 子供たちと木の下で。子供たちはちょっと緊張ぎみ。

 4月28日にスリランカ南部のハンバントータの町に着きました。この町は漁港で、津波の被害をもっとも大きく被った町のひとつで、「ゾウさん基金」が支援する孤児たちはこの地域一帯の子供たちです。私の泊まったホテルは小高い丘の上にあったのですが、ホテルの人にきくと、津波は建物のすぐ近くまで襲ったということで、本当に信じられない大きな津波であったことを実感したことです。その前に訪問したヤラ国立公園では日本の被災者が出たのですが、そこに追悼碑が建てられていました。私の研究仲間が津波の調査をしており、彼によると高さ最低10mの波が内陸1.5kmまで押し寄せたとのことでした。

 去年たくさんあったテントはほとんど片付いており、木造の簡易家屋やレンガ作りの家が建てられて、復興したことを感じました。大きく損壊したままの家や被災時のレンガがそのままになっているなど当時の傷跡もありましたが、人々の表情は活気に満ちており、子供たちは元気に町の中を走り回っていました。各国からの義援金が不適切に使われたり、被災者に十分に渡っていないといったことも聞きましたが、全体としては立ち直りを見せているといってよいと感じました。

 去年は小学校に孤児たちが集まり、たいへんフォーマルな歓迎を受けて恐縮したので、今年はぜひ簡素にして下さいとお願いしていました。29日に数軒の孤児の家を訪問し、最後にある集会所に行って5人の子供たちに会いました。私は訪問する前に、豊かでない家庭を訪問するのは失礼に当たるのではないか、当人が恥ずかしがるのではないかと少し気がかりだったのですが、それはまったくの杞憂でした。確かに家は簡素で、土造りでヤシの葉葺きの家もありました。しかし敷地は広々とし、ヤシの木にブランコが吊るされていたり、たいそうのどかでゆったりした感じでした。それに何より人々の表情が豊かで暖かく、少なくとも貧困と言うことばとは無縁のものでした。子供たちの表情は明るく、私の訪問を楽しみにしてくれていたようでとても嬉しく感じました。幼い子供たちが無邪気なのには却って心が痛みましたが、まちがいなく力強く生きてくれると確信することができました。中でもラヒル君という少年の表情は自信に満ち、強く生きるという意志が溢れていました。明治時代の日本の青年にはこのような表情があったのだろうと思ったことです。スリランカの学校制度は日本と違い、区切りの学年があり、その試験の成績で進学できる学校が決まるとのことでしたが、私たちが支援している子供たちはよい成績でパスしたと聞きました。

 孤児のために地元で献身的に活動して下さっているのがドシマンタさんです。彼はスポーツ指導員で、ゾウさん基金の毎月の支払いをし、子供たちのようすを見守って下さっています。これまでの支払いの束をみせて下さいましたが、実に几帳面で、預かったお金は一銭たりともおろそかにしないという態度に満ち溢れていました。孤児の家はかなりの範囲に広がっており、私たちの訪問は朝の8時半から動き始めて昼過ぎまでかかりました。多くの家には電話がありません。実はドシマンタさんの家の電話が故障していて、日本からの連絡は私の出発の3日前にやっとできたのです。ですから子供たちにどうして連絡をとったのだろうと思い聞いてみたら、ドシマンタさんが、私たちが去年寄贈したバイクで連絡して走り回ったとのことでした。気温が30度を軽く超える酷熱の土地で、道路もよくありません。たいへんなことだったろうと、まったく頭の下がる思いでした。彼のアドバイスなのでしょう、子供たちが絵と手紙を用意してくれていました。思い思いの絵は力作揃いでした。

 また経理関係のことはコマーシャル銀行のヘマンサさんが協力して下さっています。彼は「ソウさん基金」を管理し、最も効果的で安全な方法をアドバイスして下さっています。今回の追加分についてのアドバイスをもらいましたので、委員会を開催して最善の方法を決めさせてもらう予定です。ヘマンサさんの貢献にも感謝したいと思います。

 こうしてスリランカの心暖かい人々の支援も得ながら、子供たちに皆様のご善意を届けることができました。これまでのご厚情に感謝するとともに、ともに子供たちの未来を祈りたく存じます。ありがとうございました。